打ってよし、守ってよし。走りはまあまあよし。帝国繊維(3302)

本日ご紹介するのは、名前の重厚感がハンパない帝国繊維(3302)です。名前に「帝国」がつく企業は軒並み歴史がありますが、当社も前身となる近江麻糸紡織の設立は明治17年、西暦にして1884年です。その後、同業との合併を経て、現在の当社は1950年の設立、上場となります。証券コードは3000番台。かつて日本を支えた伝統産業「繊維」であります。それでは、細かく見てみましょう。

事業内容

事業セグメントは3つ、防災事業、リネン事業、それに不動産賃貸です。

繊維と名がつく当社ですが、防災用品の製造・販売が根幹で、売上の8割を占めています。消防ホースを中心とした消防署向けの各種製品から企業の防災グッズ、インフルエンザなど感染症対策、洪水対策などの自然災害、空港における各種セキュリティ機器など、防災SPC/商社という感じですね。

リネンは祖業と思われますが、H30年度ベースで売上50億円/粗利5億円という感じ。まあ、辞められない、という感じじゃないでしょうか。

不動産賃貸業は売上5億円/粗利4億円という虎の子で、流石は明治企業というところでしょうか。本社も日本橋の自社ビルです。後述ヒューリックとの協同プロジェクトという話題もあり、妙味の一つであります。

業績

数字を見ていきましょう。

まずはPL。売上の8割は防災事業であり、当然、官公庁向けの割合が大きく、H30年度は79億円、H29年度は52億円でした。令和元年は開示がまだです。官公庁の年度予算によって業績が変動するものの、やはり安定していますね。社会トレンドを見ると増額傾向でしょう。

次にバランスシートは、というと、自己資本比率が75%。前年度末時点では551億円の総資産の2割のキャッシュがあり、盤石というところ。それゆえROEが10%を下回るところが、継続的にアクティビストのターゲットになるところです。

ヒューリック株

さて、当社を語るうえで避けて通れないのが、保有するヒューリック(3003)株式です。そのサイズが大きいことが、各アクティビストの標的とされています。なんと、当年度末の評価額で172億円。昨年で言えば225億円。当社のB/Sは500億円前後ですので、約3割がヒューリック株となり、これがROEを下げる要因となっています。

当社は旧安田財閥系の東邦レーヨンから分離した経緯があり、現在は芙蓉会には加盟していないようですが、芙蓉グループを色濃く受け継ぐ財務や幹部構成になっています。先日、退任した飯田会長、現・白岩社長ともに富士銀行の出身ですし、現経営陣にも富士銀行/安田信託銀行/安田信託銀行の出身幹部が多くを締め、しばらくは、この旧財閥ガバナンスが続くと思われます。

アクティビスト

と、このように財務ピカピカの当社へアクティビストも目を付けており、ここ3年に渡って、動きがあります。2018年にスパークスが株主提案。ヒューリック株の売却、60円への増配(現40円)が主な内容でした。2019年末には英国系のアセットバリューインベスターズが株主提案をしましたが、結果は否決、5円の記念増配を勝ち取るに留まりました。

アセットバリューインベスターズは、旧安田財閥系の「特定株主」が当社の前進を妨げているとして、ホームページ上でより詳細な提案を公開しています。当社への投資を考えている人はぜひ一読です。

帝国繊維の改善に向けて

中期計画と投資方針

さて、こんな具合に、攻守はピカピカ。走(株主還元)に難あり、といった帝国繊維ですが、今後はどうでしょうか。

ちょうど2020年より3か年の中期経営計画がスタートしています。ぼくが見るに、帝国繊維の経営能力はとても高く、目標がわかりやすい。毎回、箇条書きで重点目標が書かれ、この3年は以下だそうです。

1.大量送排水システムによる新たな市場開拓 基幹産業のBCP対策、国土交通省・自治体による水害対策への貢献
2.セキュリティビジネスの新たなフロンティアを切り拓く セキュリティビジネスにおける商材開発強化と空港を足掛かりとする市場拡大
3.防災特殊車輌ビジネスの確立 革新的な防災特殊車輌により、消防防災・産業防災の装備刷新・充実に貢献する
4.当社事業の基盤である足元の事業を固め、一層磨き上げる 消防ホース・防災車輌・資機材・防火衣等特殊被服の4事業分野で確固たる 業界№1の地位を確保する
5.消防ホース・防災車輌生産体制の刷新
6.収益力の持続的強化を目指す

相当な納得感です。メイン商材は、台風による堤防決壊などを見据えた大量総排水システムや空港のセキュリティ関連だそう。間違いなくトレンドです。利益率は低そうですが、マスクや体温計などのパンデミック製品も取り扱っており、コロナウイルス対応も、ポジティブに働くでしょう。そのため、業績面はポジティブに捉えて間違いない。4,000円、目指しましょう。

問題は需給です。毎度、予想が慎重なため、今期業績を30%減で開示しています。また、前述の株主提案を否決したこともあり、株価は軟調に推移。コロナウイルスのマクロ環境もあり、すでに約18%を外国人株主が占める当社は、当面は緩慢な需給が想定されます。

2020-02-23 / 2020-04-05 / 資産運用